どーも!しゃんばりです!
今日もライテク図書館にお越し頂きありがとうございます!!
モトジムカーナに興味がある方なら
「アイドリングは上げた方がいいよ!」という話を一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか?
筆者は少なくとも十数回以上は耳にした記憶があり、
また、それを鵜呑みにしてアイドリングを3000rpm、4000rpm、、、
人によっては6000rpm程度まで上げている初心者の方を何名も目にしてきました。
果たしてアイドリング調整は本当にすべきことなのでしょうか?
本記事では “アイドリングを上げた方が良い” の嘘を暴いていきたいと思います。
アイドリング調整のメリット
メリット① エンブレが弱くなったように感じる
モトジムカーナのような極低速域でのフルロックターンが求められる競技おいて、強すぎるエンブレは走行の邪魔になる場合が多いです。
理由はいくつかありますが、大きい要素としては下記の2点であると考えています。
必要以上に速度が落ちてしまう
速度が必要以上に落ちてしまえばタイムが遅くなるのは当然ですが、
更に厄介なのが「足つき」です。
バイクは速度が遅ければ遅いほどバランスをとるのが難しくなる乗り物です。
ましてやその競技特性上フルロックターンを頻繁に行う為、その最中に速度が落ちすぎることは「足つき」の誘発につながります。(足つきはペナルティとして1秒加算になる)
エンブレが強すぎて必要以上に速度が落ちてしまったせいでバランスを崩し足をついてしまう。
アイドリング調整でこのリスクを低減できるのは非常に大きなメリットと言えます。
必要以上のピッチング挙動が出てしまう
ピッチングが大きいだけならまだしも、
あまりに大きいピッチング挙動は揺り戻しを誘発させてしまいます。
基本的にバイクは、サスストロークが収束していない状態では鋭いコーナリングができません。
従って、揺り戻しによりサスの収束が遅れると、ライダーはその収束を待ってからのコーナリングを余儀なくされます。
1000分の1秒を争うモトジムカーナの世界で、この待ち時間は致命的です。
アイドリング調整で手軽にそこを解決できるのも、大きなメリットであると言えます。
メリット② ドンツキが弱くなったように感じる
ドンツキもエンブレ同様にモトジムカーナという競技においては走行の邪魔になる場合が多いです。
ここでも大きい要素2つを例として挙げてみましょう。
必要以上のピッチング挙動が出てしまう
エンブレと同じじゃねーか!と言われそうですがその通りです。
ピッチングは減速時だけでなく加速時にも発生します。
また、実は減速時の意図しないピッチングよりも加速時の意図しないピッチングの方がバランスを崩しやすい傾向にあります。
従って、揺り戻しによるサスの収束遅れ対策と、足つきリスク低減。
2つの視点でアイドリング調整に大きなメリットであると言えます。
スロットルを早く開け始めることができる
上記「加速時の意図しないピッチングの低減」の副産物的なものですが、これが意外と恩恵として大きいものになります。
加速時に意図しないピッチングが発生する場合、フルバンクでのコーナリング中にスロットルを開け始めるのは足つきや転倒のリスクを高めます。
従って、スロットルを本来開け始められるポイントよりも少し遅らせ、バイクが少し起きた状態でスロットルを開け始める。という対応が求められます。
1000分の1秒を争うモトジムカーナの世界で…これ以上は言うまでもありませんね!笑
上記以外にも、回転(フルロックで270°以上のターンをするモトジムカーナ特有の走り方)をする際にスロットル操作をしなくてもよくなる。等々、色々メリットはありますが、ここでは割愛させて頂きます。
アイドリング調整のデメリット
デメリット① ライダーがコントロールできる領域が少なくなる
例として11,500rpmまでキッチリ回るバイクがあったとします。
このバイクのアイドリング回転数が1,500rpmだったとすると、ライダーがスロットル操作でコントロールできる領域は1,500rpm~11,500rpmなので、10,000rpm分の領域をコントロールすることが可能です。
一方、同じバイクでアイドリングを調整し、アイドリング回転数を6,500rpmに設定していたとします。
この場合、ライダーがスロットル操作でコントロールできる領域は6,500rpm~11,500rpmなので、5,000rpm分(上の例の半分)の領域しかコントロールできないことがお分かり頂けるかと思います。
本来はコントロールできたはずの領域を奪われた状態での走行を余儀なくされるわけですから、
ある意味、低回転側に「リミッターを設けられた状態」とも言えます。
え、でもアイドリング回転数が6,500rpmだったとしても、
走行中だったらブレーキをかければエンジン回転数は6,500rpm以下にもなるよね?
そう思ったそこのあなた!鋭いですね!!
詳細をこの記事の最後「補足」の項目にてご説明させて頂きますので、もし詳細を知りたいと思った方は是非最後まで読んでみて下さい♪
デメリット② ライダーの成長を妨げる
まず大前提として、モトジムカーナはタイムを競う競技です。
従って、今現在、自分が0.01%でも速く走れる手法を選択する。というのは至極当然です。
先述の通り、アイドリング調整には多くのメリットがある上、多くのバイクで手軽にできる手法の為、初心者の方が手っ取り早くタイムアップするのに非常に効果的であることは間違いありません。
これはアイドリング調整という手法を用いて
「コントロールが難しい領域」を「コントロールしなくても済む」ようにしている。
と言い換えることができます。
そしてこの記事で皆さんにお伝えしたかった最重要ポイントがここです。
「コントロールしなくて済む」は「コントロールの練習機会を奪う」と同義である
皆さんが、今この瞬間、速くなりたい”だけ”なのであれば全く問題ありませんが、
今より少しでも上達したい!上達によって速くなりたい!と思うのであれば、自らその練習機会を奪ってしまうことは、非常にもったいないことだと思います。
結論:上手くなりたいならアイドリングは上げすぎるな
このサイトにたどり着いた皆さんでしたら一度は白バイ大会の動画を見たことがあるという方も多いのではないでしょうか?
安全運転大会の最高峰である白バイ大会。
アイドリング調整はレギュレーションで禁じられていますが、白バイ隊員がアイドリングを上げられないせいでギクシャク走行しているところを見たことがあるでしょうか?
また、モトジムカーナ界では知らない人はいない。あのキングオブジムカーナ作田選手も、アイドリングをほとんど上げないことで知られています。
そう。大前提として、十分な技量を身につければアイドリング調整などせずともこれだけスムーズに走ることが可能なのです。
とはいえ、作田さんレベルのスロットルコントロール技術を習得するには、恐らく1万2千年くらいかかると思いますので、アイドリング調整を一切するな。と言うつもりは毛頭ありません。
筆者の経験上、2,000rpm~3,000rpmくらいがいい塩梅なのではないかな?という肌感なので、
もし皆さんの中にもっと高い回転数に調整してしまっているという方がいらっしゃいましたら、試しにアイドリングを少し下げて練習してみると、更なる成長が見込めるかもしれません♪
補足
ここまで読んでくださったそこのあなた!ありがとうございます♪
文中にあった疑問、
「アイドリング回転数が6,500rpmだったとしても、走行中だったらブレーキをかければエンジン回転数は6,500rpm以下にもなるよね?」
について、補足していこうと思います。
アイドリング調整していないバイクがエンブレと前後ブレーキで6,500rpm以下になった場合と、
アイドリングが6,500rpmのバイクが前後ブレーキで6,500rpm以下になった場合で、車両姿勢に違いがあります。
この違いは主にバイクのディメンジョンによってもたらされる、2つの力によって生じます。
駆動力によって生じる「リアサスを伸ばす方向に働く力」:アンチスクワット力
リアブレーキ効力によって生じる「リアサスを縮める方向に働く力」:スクワット力
読者の皆さんも一度は聞いたことがあるかもしれませんね♪
アイドリング調整をしていないバイクがエンブレと前後ブレーキで減速する場合、
スクワット力が支配的になる為、リア分布荷重とリアサスの反力、更にスクワット力が釣り合う位置で車両姿勢が決まります。
この時、フロントブレーキ、リアブレーキ、エンジンブレーキの3つすべてが車両の慣性を制動方向に作用していることもポイントです。
一方、アイドリングが高すぎるバイクはエンブレは作用せず、むしろ駆動力がかかっているわけですからアンチスクワット力が発生します。
従って、リア分布荷重、リアサス反力、スクワット力、アンチスクワット力が釣り合う位置で車両姿勢が決まります。
また、当然ですが車両の慣性に加えて余剰駆動力も前後ブレーキだけで制動する必要があります。
え、それの何が悪いの?
リア分布荷重、リアサス反力、スクワット力、アンチスクワット力が釣り合う位置でちょうどよくなるようにセッティングしたらいいんじゃないの?
と思ったそこのあなた!鋭すぎです!
そう、もちろんそこに合わせてサスセッティングを変更することは可能です。
ですが、ここに大きな落とし穴があるんです。
例えば上記の例同様に11,500rpmまで回るエンジンで、アイドリングが6,500rpm。
フルロックターンが要求されるような低速セクションでは前後ブレーキでエンジン回転数が6,500rpm以下まで下がるので、それを肯定したサスセッティングにした(リア分布荷重、リアサス反力、スクワット力、アンチスクワット力が釣り合う位置でちょうどよくなるようにセッティングした)とします。
さて、このバイクが高速スラロームセクションを走った時、何が起きるでしょうか?
そう、高速スラロームセクションではエンジン回転数が6,500rpmを超えますので、減速時には当然エンジンブレーキがかかります。
あれ?せっかくリア分布荷重、リアサス反力、スクワット力、アンチスクワット力が釣り合う位置でちょうどよくなるようにセッティングしたのに、アンチスクワット力が発生しませんね?
もうお分かり頂けたでしょう。
上記のような仕様だと、必ずどこかにウィークポイントが生じてしまうのです。
え?でもアイドリングめちゃくちゃ上げてるA級選手とかいますよね?
あの人たちはどうしてるんですか?
君のような勘のいいガキは・・・(以下略
アイドリングをめちゃくちゃ上げてるのに速く走れてる選手の多くは、アイドリングを上げているだけじゃない
というのがポイントになります!
彼らはECUセッティングにより駆動力を弱めたり、二次減速比とアイドリング回転数のバランスを絶妙に調節していたり、それに加えて卓越したライディングスキルがあります。
スロットルコントロールができないから安易にアイドリング調整で解決しようとしているのではなく、スロットルコントロールできる技術を持ち合わせながらも、更に1000分の1秒の速さを突き詰めて最適化していった結果、アイドリング回転数が高くなっていった。というわけです。
おわりに
今回は”アイドリングを上げた方が良い”の嘘の部分について説明してみました。
いかがだったでしょうか?
安易にアイドリングを上げるのは良いことばかりじゃないというのがご理解頂けましたら幸いです。
もしご意見やご質問あどありましたら、お気軽にコメント頂けますと嬉しいです♪
今日も最後まで読んで頂きありがとうございました!!
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